職場ハラスメント(パワハラ、モラハラ、職場いじめ、問題上司)の対処法

効果的な管理職研修とは?

知識面の研修だけでなく、現場で使えるストレス対処の実習を組み合わせるのが理想です。

2006年に雇用機会均等法が改正され、企業のハラスメント対応に対する罰則などが導入されてから、ハラスメント研修や、eラーニングを取り入れる企業が増加しています。これらの研修プログラムの多くでは、ハラスメントに該当する行為や、ハラスメントとなる可能性のある行為のリストを提示し、自分の言動が、そのリストに該当するかどうかをチェックしてもらうという方法が取られているようです

29ILAF28座学研修は、ハラスメント教育の「入門編」としては良いでしょう。「セクシュアル・ハラスメント」や「パワー・ハラスメント」という言葉は、かなり世間に知られてきてはいるものの、まだ誤解も多いものです。さらに、「モラル・ハラスメント」という言葉を知っている人は、まだまだ少数です。ですから、ハラスメントの基礎理解を深めさせることで、一定の予防効果は期待できると思います。

また、抑止力といった意味では、ハラスメントの法的リスクについて、しっかりと理解させることも必要でしょう。実際に、部下をハラスメントで追い詰めて、自殺させてしまったとしたら、本人が、遺族から数千万円以上の損害賠償請求をされる可能性や、業務上過失致死傷罪といった刑事罰を受ける可能性があるのです。

しかし、どんなに知識を深めても、このような座学研修だけで、ハラスメントを防止するには限界があるというのが、当社の意見です。というのも、極論すれば、ハラスメントとは、「相手を傷つけること」であり、自分が「相手を傷つけていること」を感じることができなければ、自分のハラスメント行為には気がつかないからです。

とりわけ「モラル・ハラスメント」に関して言えば、セクハラやパワハラとは異なり、「やってはいけないリスト」を作ることができません。というのも、視線を合わせない、声のトーンを微妙に変えるなど、本当に無意識でやってしまうようなことも、ハラスメント行為になりうるからです。

ですから、当社では、ハラスメントを撲滅する上で大切なポイントのひとつは、管理職が、部下の感情をきちんと読み取れる能力を高めることだと考えています。部下の感情を読み取れない管理職は、それが自分の意図ではなかったとしても、部下をひどく傷つけたり、とことん部下を追い詰めたりしてしまいます。

29ILAL34ハラスメントを行う管理職のほとんどが、部下に「ストレスのはけ口」として、ハラスメントを行ってしまっている「ストレス習慣型」です。いらいらして、つい部下にあたってしまった・・・。これはあなたにも思い当るところがあると思います。部下にはけ口を求めてしまうのが、それが一番楽だからです。ストレスがたまると、人は自己中心的になり、部下の感情がわからなくなります。もしくは、わかりたくなくなるのです。コロンビア大学のハーヴィー・ホーンスタイン教授(組織心理学)も、その著書『問題上司』(プレジデント社)のなかで、「良い人も追いつめられると<問題上司>になる」と述べ、「部下にあたっているのは自分でもわかっているが、上司は挫けそうになった自分をかろうじて支え、心の均衡を保とうとするために、部下をやっつけてしまう」と述べています。

ですから、本当の意味で、ハラスメントを予防するには、管理職がストレスに上手く対処できるようになることだと考えます。ハラスメント研修をより充実させるには、ハラスメントの基本理解を深める座学研修と、現場で使えるストレス対処法の実習を組み合わせることが理想です。

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社会保険

2010年5月号から12回連載しました